雑記 20230225-20230407

飽き性なので日記などはとうてい続かない。ゆえの妥協の産物としてのマンスリーレポートなのだが、月いちでの惰弱更新さえsaboするんだから始末におえない。

 

20230407
天気が悪いが午前中は雨が降らないらしいのでみなとみらい方面を散策する。どうも日記をつけてはみたものの、代り映えしない毎日なので意欲低下し継続が難しい。

20230404
日月で逗子キャンプを行い多少気分が晴れた気がする。自転車の縦置きスタンド組立。ハンドルが出っ張るのが気になる。今日は期日前投票へ行く予定。

20230401
鶴見川の河口から綱島まで軽くポタリング。長時間の自転車漕ぎに体が不慣れだからか足の筋肉がかなり草臥れている。午後キャンプの予定だったが明日に順延。

20230330
自転車のサドルが固いので別のサドルを付けかえることにした。モジュールをつけかえればいくらでも性能が変わるのが自転車や自作PCの面白い部分だ。健診で家族全員に脂質異常が出てしまったので食生活の見直しを考えざるをえない。とはいえ献立は自分ひとりで決められるものではないので、ある程度は妥協せざるをえない。

20230329
大豆戸まで自転車で買い物。自転車のハンドルの長さを調節するため金属やすりを購う。午前中は晴れたが夕方頃からまた雨。

20230328
今週は晴れるかと思ったが小雨降る。菜種梅雨は続くらし。朝は昨日のテイクアウトから揚げの残滓を片付け昼は冷凍そば。頭がぼんやりしている。

20230327
バイオハザードを進める。エイダ編がかったるくて投げ出そうと思ったが、無職なのだしせめてゲームくらいは腰をすえてやれとの叱咤を自分自身から受け再開する。が、研究所へ到着したところで熱暴走からかゲームが落ちてしまった。Radeon RX6400では負荷が多きすぎるのかもしれない。今週はようやく晴れ間が見えてきそうなので運動したい。

20230326
最近は綱島日吉の再開発の話題でもちきりだが、東急は菊名方面ももう少し手を入れてほしいものだ。そんなことを朝から考えつつコーヒーを飲んでいる。

20230325
朝から雨で出かける気にもなれず、黙然とネットを彷徨。死後と化したネットサーフィンという言葉は電子の海を華麗に乗りこなす光景を想起させるがむしろ自分の場合は電子の藻屑と化して深く海底へ沈んでゆくネットデトリタスであるかのように思える。自転車のペダル交換を行うとしたが、これがなかなか硬くて難儀した。購入した自転車にペダルがなかったので、店で安物をつけてもらったのだが、ろくにグリスも塗られていないのでまるで動かない。あまりよい店ではないのかもしれない。苦心した結果、レンチをあてがい靴で踏んで無理やり動かすという荒業でなんとかはずすことに成功した。

20230324
夜中に目覚め、しんねりとしていると明け方近くまた眠くなり二度寝。注入軟膏というのは便利だが座薬に比べると漏れやすい気がする。尾籠な話で気がひけるが、やはり座薬の方が便利である。自転車の整備が完了したとの連絡があり受取へ行く。

20230323
ブログのタイトル作成YYYYMMDDが面倒なのでネットに掲載されていたブックマークレットから日付取得を試す。これなら一秒でコピペ可能となり大変便利である。朝から胃腸炎らしく便の回数が多くたびたび上厠。倦怠甚だしく朝食後また眠る。

20230322
野暮用あり前の職場に行かねばならず気が重い。退職理由をしつこく問いただされたら厄介である。久しぶりに品川へ行くのでぼんやりしていてルートを間違えてしまい慌てて武蔵小杉で下車。横須賀線へ乗り換えるが、どうも不慣れなので危うく成田エクスプレスへ乗りかける。しかしなんだかんだ到着するので品川駅の利便性は図抜けているなと感じた。駅構造もシンプルで間違えづらいのも好感が持てる。

20230321
朝からキムチでごはんを食べたところ腹が渋りだした。微妙に体がだるく頭が働かない。排泄の回数が増えた結果肛門からの微量出血有。注入軟膏を買わざるをえない。

20230320
頭痛とふしぶしの痛みがある。花粉症の薬が効きすぎて泥のように眠ったのでその影響か知ら。菜種梅雨の前に寝具を洗おうと思いたちシーツを引っぺがすとパナソニックの電気毛布のニクロム線がよれていて毛布が縮緬みたく波打ってしまっている。こうなってはさすがに安全面で差し支えるので破棄せざるをえないが、買って二年でこうなると正直閉口である。松下も昔に比べると耐久性が落ちたものだ。来冬は電気毛布はよして布団乾燥機を使う予定。

20230319
PCのパーツ交換(電源とマザーボード)を行う予定なのだが、ふとメーカーPCのCPUファンをそのまま流用できるか不安が兆した。規格が合わないと追加購入となりたいへん面倒くさいのだが、現物合わせしないとなんとも言えない。駄目ならいっそ簡易水冷に換装してやろうかとも考える。彼岸なので母と菩提寺掃苔へ行く。毎年このくらいの時期は風が強く、花粉混じりの風に吹かれて供養をしている。PC組立は案の定クーラーの規格が汎用ではなく慌ててヨドバシへ買いに走るはめに。結局DellのPCから抜きとって再利用できたのはメモリとCPUくらい。メーカーPCはつぶしがきかないのでコスパが悪いと痛感する次第である。今回、総とっかえしたおかげでようやくグラボの外部電源が取れるようになったので、来月くらいに新しくグラボを調達したい。

20230318
東急の新駅開業日。新綱島駅とやらを見に行きたい気持ちはあるが、あいにくの雨模様なのでよしておく。この先いくらでも見る機会はある。綱島もむかしは本を買いに行くための利用駅だったのだが、いつしか本屋から足が遠のき、最近はもっぱら鶴見川の河川敷に行くためだけに利用する駅と化した。パソコンの組みなおしを行うべくマザーボードと電源をヨドバシで頼んだのだが、配送が遅延してしまい予定が狂う。

20230317
抗ヒスタミン剤の影響か頭がふらふらしている。午後から雨らしく洗濯物は微妙かと思ったら降るのは夜かららし。ウィキペディア見たら久しぶりにジミー・ウェールズから寄進の催促が表示された。バイオのRe2をsteamのセールで購入したが、グラボの性能が低く画面がもわもわしてしまう。PS3くらいの時期のゲームと思ってプレイするしかない。

20230316
やや風邪気味なのは寒の戻りのためか。花粉アレルギーの影響もあるので判別がつかない。図書館へ本を返しに行く。何かめぼしい本はないかと物色したがすでに貸出中のものが多く手ぶらで帰る。道すがら電書で読みさしのルシア・ベルリンの二冊目をちびちび読んでゆく。人生の物憂さや虚しさがしんしんと降って自分の背丈を越えてうずたかく積もるような読み味。

20230315
腰が重い感じがある。『パターンシーカー』を読み始める。若い頃に比べて読書量は減ったけれど一日パソコンと向き合ってるから純粋に活字を読む量はおそらくたいして変わらない(受け取るドキュメントの質はさておき)考えてみると文字を読むのが苦痛でないのは有難い性分である。これで怜悧な理解力が伴えばさらに良かったのだがそれは高望みというものだ。スキルやリソースに起伏のない人間はいないので。

20230314
父のThinkPadの初期設定を行う。アップデートの量が多すぎて一時間近くかかる。しかしデータ収集の同意を求める項目が多く辟易する。久しぶりに甥が家へ来た。今年で年長組らしいが、相変わらずおさるのジョージに夢中で言葉は話さない。カナー型自閉症の子はどのような人生を歩むのか。興味本位で失礼な物言いだが興味があるのは否定できない。モルモットとして扱いたいわけではなく家族としての立場と観察者としての立ち位置があり私という人格はその積集合だ。綱島まで歩き途中図書館で予約本の受取。

20230313
寝つけず夜更かしをしてしまい朝寝坊した。空が薄暗くどんよりしている。洗濯はなし。腰が痛いのでAmazonブランドの湿布を貼る。フェルビナクが含まれてればメーカーは大差あるまい。ひたすら部屋のアウトドア用品の整理に明け暮れる。大学時代の友人Tが駒込の祖父母の家を借りて暮らしているのだが、その家賃支払いが滞っているらしく父から督促を頼まれ送付した。

20230312
逗子でキャンプ。塩を忘れてしまったのでハラミをプレーンのまま焼いて食べた。やはり塩気がないと味気なく感じる。夜催しキジ撃ち。一晩考えたが、やはり自転車を買おうと思いたち調べるが、欲しい自転車は20万オーバーとなり無職予定者としては厳しく思えたのでBREEZERのRADER CAFEなるエントリークラスのグラベルをポチる。楽天ポイントを費やし10万弱也。

20230311
払暁地震有りめざめる。関東は震度3弱らしい。震災の年目ということもありなんだか不気味な感じがある。portalを進めようとしたが、画面酔いが激しく断念。

20230310
布団のなかでぼんやりしている。タープ泊用のポールを購入予定なので物色している。妹が長女をつれて帰省。夫から買ってもらったという70万円だかのロレックスを見せびらかしているが、ブランド時計の価値がよくわからないので反応に困る。2021年秋からのラニーニャ現象が収束したらしく今年は山の雪解けも早そう。GWは八ヶ岳や奥秩父へ行くのもわるくない。

20230309
朝から頭が重いものの比較的ましなめざめ。プリンスペペでキムチ購入。モランボンのキムチは近場だとここでしか売っていないため。

20230308
洗濯機の設定を間違えたらしく朝から怒られが発生した。夜中目覚めたせいか頭が重く眠い。花粉の影響はなはだ大にて意気くじかれる。冬菇とは椎茸の品種だと長年思ってきたがどうやらかさが開ききる前の椎茸の総称らしい。自然薯と山芋がおなじと知ったときも拍子抜けしたが、今回もなんだか釈然としない。本日は3月8日で鯖の日らしく夕食は塩鯖を食した。

20230307
office2019をダウンロードした。登山記録のデーターベース構築を考えていたので古い端末のライセンスを引っ張り出した恰好。あとはヤマレコから各種データをスクレイピングする。CSVで一括取得できればいいのだが必要なデータ(獲得標高など)がエクスポートされないので自分でとる必要がある。夕飯はカツ煮。三つ葉を多めに入れて食した。

20230306
登山の洗濯物を洗いたいのだが天気が悪く明日へまわすことにした。春先からのタープ泊に向けてSwingTarpのショックコード設置やBugBivyのガイラインなどの仕込みを行う。

20230305
妹の誕生日。鎌北湖の畔を歩き東毛呂駅から帰宅。坂戸からは東横線直通なので有難い。しかしこの近辺の地名は難しい。高麗はこうらいではなくこまだし、毛呂はけろではなくもろ。朝鮮半島の渡来人由来の地名なんだろうか。大雪海のカイナ8話を視聴。弐瓶先生は相変わらずラッキースケベ展開を好まれることである。BlueskyWaitlistからメールが届いたと思ったらただのアンケートで拍子抜けした。

20230304
高麗駅から日和田山、高指山、ユガテと縦走し、鎌北湖近くの雑木林にて一泊。花粉が飛び、鼻がむずむずしたもののここ最近服用している漢方のおかげか小康を保つ。インジンジの靴下に穴。買い替えなくては。

20230303
花粉症による頭痛と寒暖差アレルギーのダメージで起きれず、家で静かにすごしている。父が仕事用のノートPCを買うので付き合う。lenovoの通販サイトのUIがひどく苦戦。父は仕事用のメアドで通販サイトだのゴルフ場だのの登録をしているらしく、定年退職の前に急いで新しいメアドへ移管する必要があるそう。

20230302
朝方風が強く小雨。この時期の目の違和感は花粉由来か眼精疲労由来か判断がつきにくく二種類の目薬を交互にさしている。すじこを食べ勉強を進める。明日の登山計画を練る。東毛呂から奥武蔵を歩き高麗着予定。油断するとつい習慣でTwitterへ文章を投げてしまう廃疾があるので一歩ずつ寛解を目指したい。steamのセールで購入したportalで遊んでいる。フリマアプリでPS4を売り捌く。もうソニーのゲーム機へ戻る機会はない気がするが果たして。

20230301
花粉飛散の影響なのか朝から頭が重い。鼻水はないのでアレルギー鼻炎薬ではなく頭痛薬を服む。この頃プランクをサボってしまったのでお腹が出てきてしまっている。運動習慣の復活を考えたい。Windows11のアップデートでタスクバーの中央へ検索窓が追加されなんだか妙な感じがする。夕飯はスパークリングワインを呑んで、生牡蠣、魴鮄の刺し身、マグロ海鮮丼。プリンスペペ地下の魚屋の魚介は旨い。

20230228
風強く洗濯物がベランダの床へ落ちる。新しく出るSURLYのPREAMBLEのフラットバー完成車が168,300円と昨今の自転車としては廉価な部類なので心が動いている。無職予定者としてはチャリを買って遊び呆けるのは気がひけるが。『ELDEN RING』のDLC「Shadow of the Erdtree」が発表され歓びもひとしお。だが発売はしばらく先とのアナウンスなので先にAC6が出るのかしら。昨日買い損ねたドラフティーは寺尾のOKストアで購入した。シックスパックで700円以上するため今後はAmazonにて購入予定。昨日今日で散髪と剃毛を済まし体が軽くなる。

20230227
午前OKストアへドラフティを買いに行くものの見つからず。茜霧島、はちみつキャンディー、チーズなど購入し帰宅。Pythonの自習を進める。atomicheartが気になるが、ウクライナ政府は購入を控えるよう要請している旨。購入したとしてゲーム代の幾許かが露政府へ流れ兵器の購入資金となるとしたら興味本位で買うのは徳義へ悖るのでsteamのウイッシュリストから削除した。LDLコレステロール値を下げるため昼食はキャベツと豚バラのキムチ鍋。苺ましまろの最新刊が出た。2017年以来の刊行となるとハンター再開以上の慶事かも知らん。

20230226
逗子にて。朝方冷えこみハンモックビビィの中から出られず愚図愚図した。昨日の残り汁にアルファ米と刻み葱を入れたものを食べ0930帰宅。その後は家で静かにすごした。父が庭のヤマボウシの植え替えをするのでフェンスの外側から新しい苗を持ちあげる役目を担う。根鉢が重く上から力づくで引っ張るのでは持ち上がらない。夜は冷蔵庫の残りのザワークラウトとドラフティー。横浜のキオスクで龍角散を探したが見つからず。新型コロナに効くとの風説が流布し中国人による買占めが発生しているらし。

20230225
奥武蔵登山の予定だったが起きると体調思わしくなく逗子でのキャンプへ変更。ならば焚火をと思い火遊びの用意するが肝心の焚火台を忘れる。夕飯は肉のキタムラで購入した葱牛タン、成城石井のベーコンとキャベツのコンソメ煮。夜半風強く肌寒い。足裏用の桐灰マグマを初めて使用したが、最初のうちこそ具合が好いものの象足の中で熱くなりすぎたので剥がした。

2013年の自分からの手紙

拝啓 未来の私へ

お久しぶりです。現在2013年の8月16日です。
世間では「艦これ」が流行し、コンビニの冷凍庫へ入るアホがTwitterで炎上し、家族は連続テレビ小説の「あまちゃん」に毎日釘付けです。
今年は例年以上の猛暑で水ばかり飲んでいるため、胃腸の調子が思わしくありません。毎日腹をくだしています。
Twitterのフォロワー数は70人になりました。貴方は今でもTwitterを続けていますか?

貴方がこの手紙を読むのは何年後になるのでしょうか?
38歳になるのってどんな気分なんですか?
28歳の今でさえ毎日腰痛と腹痛で悩んでいます。
きっと未来の貴方はもっと体調が悪くなっているんでしょうね。心中察します。
ただ生きていればいいことがあるかもしれないので、
決して希望を捨てることなく、前向きな人生を歩んでください。

恋愛に関しては期待するのは酷ですね。
今の自分から、将来、家族を作れているとは思えません。
おそらく独身のままかと思いますが、そう気に病まないでください。
もし天文学的な確率で恋人ができたのなら、もうそんな奇跡は二度と起こらないと思うので大事にしてあげてください。
それでは人生の中盤であるアラフォーを迎える貴方に幸多からん人生を。

文フリ東京35 訪文

文学フリマへ行くのは久しぶりで、天空橋から浜松町行きのモノレールへ乗り換えると、座席が通常の二条式鐡道とは異なる配置であるため、非日常の車内暖気がやわらかく私の周囲へ漂いだし、ああこれからモノレールで流通センターへ向かうのだな、そしてあの混雑へ身を投じるのだな、という気持ちが否応なく持ちあがる。

そして昭和島駅にて空港快速の通過待ちをしていると、曖昧然とした心細さが具体的な不安となって胸中へたちこめてくる。毎年の通例行事でも慣れないのに、ましてや今回はコロナ禍による数年のブランクがあるため、その不安は数倍増である。いっそ仮病だのペットの急病だので帰ろうかと考えるが、ここまで来て不義理を働くのも心無い、となれば行くしかないのだ、覚悟をかため行くのだ、と叱咤して流通センター駅へ降りたてば、同じような淀んだ空気感の黒ずくめの眼鏡着用率の高い集団が忙しなく行きかい、ああ彼らは〈同類〉なのだな、と考え、それでなんだか余計に心細くなるのは如何なる心理作用なのかと考えるうち会場へ入る。

今回からかは知らないが、胸にビジター用のシールを貼る。余談だがこのシールは翌日の出社までつけっぱなしにしてしまい、危うく要らぬ恥をかくところであった。何も緋文字やナチス支配下でのダビデの星じゃあるまいし、見られたところで困るものでもないのだが、なんとなくばつが悪いくらいの思いはする可能性があるゆえ、参加者各位におかれては、イベント終了後は余計なものは取っておくに越したことはない。

ね群ブースを訪れると、主宰であるばななさんに挨拶をし、笹さんの差し入れと、二年分の合同誌をいただく。ばななさんは少し疲れた様子である。激務と深酒とあたらない競馬で体を傷めているのでなければいいのだが。なにとぞご自愛ください。

むらしっとさんは変わらない。池袋へ火鍋を喰いに行ったときのままの溌剌とした姿でご健在である。しかもその間に執筆技術を研ぎ澄まし、商業誌デビューを果たされ、八面六臂の活躍ぶりである。じつに御見逸れする次第だ。この間、部屋へ引きこもってだらだらと動画視聴とゲームを繰り返し、あたら非生産的な日々をすごしてきた私なんぞは目を合わせるのさえ烏滸がましい。いやそれは謙遜しすぎでは。

久しぶりに対面で人と話したからか、頭が真っ白になってしまい、よい感じのお話ができなかったのは痛恨事である。ふだん会わない相手にこそ、一期一会の精神で村上春樹の小説の登場人物的なウィットとイロニーに富んだ会話を繰り広げたいものだが、まるでお目当てのアイドルの握手会に初めて参加したうぶな高校生みたく、とおりいっぺんの挨拶のみで済んでしまった。しかも、なぜか隣のブースに座っている方を笹帽子さんと勘違いしてしまい、とんだ恥を掻いた。向こうも急に「笹さんですか?」と誰何され面妖な面持ちである。最悪なのはひと間違えをしたのに、ちゃんと謝罪しないで笑ってごまかしてしまったおのれの怯懦だ。あれはよくない対応である。私を反面教師として、これを読んだ青年たちはひと間違いをしたら速やかに謝罪して欲しいものである。

そんなこんなで会場へ到着するや否や光の速さで疲労困憊してしまい、朦朧たる様子で会場内のぐるりを歩き、人混みをこれ以上跋渉するのは辛抱敵わんなとの思いを新たにしたところで、お目当ての同人誌を購入して退散することにした。小林さんには会えたが、全ムーさんやがらんさんには会えずじまいである。本物の笹さんもだ。だが、それもまた人生。クーベルタン男爵も言っているではないか、文学フリマは参加することに意味があると。その文学的香気だか瘴気だかを吸った時点で、私はなすべきをなしたのだと判断し、なすべきをなしたのなら長居は無用であると『Rikka Zine Vol.1 Shipping』および『異界觀相vol.2』を携えベイサイドをあとにした。

今回の学びとしては、だいぶん精神的に衰弱しているのを改め自覚した次第である。このたびのねじれ双角錐群の取扱説明書合同のタイトルは『故障かなと思ったら』であるが、実際のところ故障しているのは作品ではなく、著者本人だったのだ。であるとすれば『沼妖精ベルチナ』に取扱説明書要素がないのは、まさしく作者の故障ゆえに、おのれ自身の取扱方がわからなくなったからに他ならない。来年こそ、私は私自身の取扱説明書を書きなおし、新たな段階へと進みたいものである。

10月はお休みします

月例報告で休みがあるとそのうち季刊、年刊、不定期刊行と間が空きはじめ、やがて更新が途絶えるのが世の常ひとの常である。そも人生自体、その人の精神と肉体の定期刊行の断絶によって完結するのだから、エタるのは摂理であり決して恥ではない。

 

それはともかく近頃、精神的にきついのは労働面での不遇によるものが大きい。詳しくは差し控えるが、結局のところ居るべきではない場所へ長らく居すぎた弊害だ。巨大なつららにピッケルとアイゼンを突き立てしがみついている状態で、気温が低いうちは膂力でかろうじて持ちこたえられるが、陽が登るにつれ氷柱は溶けだし細くもろく崩れてゆく。こうなればいつ落下してもおかしくない。いっそ潔く氷河へ落ちてしまえば楽だが、なまじ登攀技術を恃んでいるから、なにくそ意地でも落下するもんかと握力を強め、ぎりぎりと踏ん張るから、落ちそうで落ちない。不安定な薄氷であろうと、いずれ陽の向きが変われば再び固くなるだろう、万事それまでの辛抱であるとのはかない期待を抱き始める。だが足はぷるぷる、指先はかじかんで感覚がなく、なけなしの期待の火種は心中で燃えあがるにはあまりに微弱な燠である。

こうしたうで蛙の悲しい心理が、われわれの心を腐らせる一因なのだ。

SF短編『果樹園』

 俺たちの独房。四畳ほどのうなぎの寝床だ。奥に土間があってセラミックの便座と洗面台が据えつけてある。窓は不透過シートで覆われ、外がどうなっているかはわからない。
 虜囚である俺の日課は果樹への水やりだ。朝、日の出間近になると独房の鍵がはずされる。鍵束を手にした顔のない看守が監獄から出るのをじっと待つ。足音が消えると俺は動きはじめる。中庭の水場でブリキの如雨露へ水を汲む。錆びついた水道管の蛇口をひねると咳ぜんそくの患者みたく水がごほごほ吐きだされる。如雨露の半分ほどの水位で一度水がとまる。理由は不明。ただ、しばらく待つとまた咳が始まるから、その間に肥料の準備をする。
 肥料袋は監獄の中庭の隅にある納屋へ届けられる。顔のない看守の小姓が運んでくる。フードをした無口なやつだ。声帯がなくしゃべれないのかもしれない。
 肥料の口を縛る縄をほどくと、饐えた煤状の物体が出てくる。腐敗したもろみのような。こいつが肥料だ。まともな農業なら化学肥料だの牛糞だのをやるんだろうが、俺たちの果樹園ではこいつを施肥する。これは何なのか。考えない方がいい。考えてわかるものでもないし、以前この肥料の溶けこんだ水を呑んだ鳥が、ひどく苦しみ緑色の泡を吹いて死んだ。だから俺も素手で触るのは避けている。要はそういう代物だ。
 全部で六つある独房のうち、果樹が育っているのは四つのみだ。ひとつは最年少のマシタだったが、マシタは発芽後間もなく枯らしてしまった。俺の失態だ。水やり係としての経験が浅く、よかれと思って水をやりすぎたため、根腐れを起こしてしまったのだ。マシタの脇腹にぽつぽつ黒点が生じたかと思うと、そこから壊死しはじめた。フードの小姓が用立てた薬品を塗ってはみたが、一度生じた腐敗はとめられない。数日で腐敗菌が脳へ達した。
 これ以上腐敗した苗を放置すれば感染が広まる。俺はやむなくマシタを根もとから切断し、焼却炉へ運んで燃やした。形見となったマシタの眼鏡は、遺灰と一緒にして中庭へ埋めた。
 へまはしたが、残りの苗は無事、果樹としてすくすく成長している。収穫の時期になれば豊かな実を結ぶだろう。来たるべき収穫のときを想い描きながら、俺は独房を順番にまわって如雨露で水をそそぐ。
 イナダは四株のなかでいちばんの有望株だ。もともとの土壌が栄養豊富だったのが幸いし、枝ぶりのよい大木となった。以前は筋骨隆々とした大男だったが、この頃はだいぶ果樹に栄養をとられ、痩せ細ってきている。木質化した胸板を撫でると、かすかに心臓の動く気配がする。イナダは俺にとっても頼れる兄貴分だったから、なるべく長く苗床として残してやりたいものだ。
 一方クボは成長が今ひとつだ。植木鉢のかたちに開頭した頭蓋から露出する脳へ水をやるが、なかなか吸いこんでくれない。土壌の質が苗床向きじゃないのか。幹は細く葉先が黄色く萎びている。脳幹まで根が張っているか怪しいものだ。これでは果実が実ったところでイナダに比べると見劣りは避けられない。
 クボは同期だが、さほど付き合いはなかった。とはいえ今は貴重な苗床に変わりはない。看守からの指示でクボの剪定をすることにした。ぶよぶよした豚足のような右腕(ここからして、栄養が果樹に届いてないのがよく判る)を、外科手術用の鋸で切断したのだ。出血は覚悟の上だったが、すでにクボの体内は根が張りめぐらされ、血は一滴も出なかった。とろっとした樹液が垂れた程度だ。
 余計な手足をそぐと、目にみえてクボの生育がよくなった。適切な剪定や摘芽が果樹の成長を大きく左右する。この分ならクボを間引く必要もなくなる。俺とて鬼じゃない。育つ目のある同僚を焼却処分したくはないからほっとした。
 つづいてオムラの独房へ。オムラは俺たちの小隊の紅一点だ。鉢として費やされる前は、ころころとよく笑う快活な女性だった。過酷な任務で殺伐としてくると、メディックバックから飴だのチョコレートだのを出してきて俺たちに振る舞ってくれた。あの甘味は忘れられない。
 水やり係である俺が個々の鉢に対して贔屓するのは褒められたもんじゃないが、オムラについては思うところがある。彼女に対して、おなじ部隊の同僚以上の気持ちがなかったと言えば嘘になる。
 まだ彼女が二足歩行していた頃に、ちゃんとデートに誘えたなら。だが職場恋愛などと、そんな浮かれたものとは無縁だった俺には、どだい無理な話である。弟から囃され、仲間からは嗤われ、俺のひそかな恋心は芽吹くことなく潰えた。
 オムラの乳房をそぎ落した胸部からは、色あでやかな花が咲いている。心臓から送りだされる微かな血を啜って咲く深紅の花、胆液を煮詰めたような黄土色の花に、髪のメラニン色素由来の漆黒の花。人それぞれ好みはあるんだろうが、どれもみな素敵な花々だ。
 オムラの胸腔から咲く花は、どれも摘み取るとものの数分で枯れてしまう。大きすぎて切断した乳房を花びんにしてみるのも試したが、どの花も乳腺からの分泌が混じって白い斑入りの毒々しい紋様に変わるのでなんだか落胆した。それ以来、彼女の左右の乳房は独房の壁に吊るしたまま。物ぐさな家庭の食卓の一輪挿しよろしく、ドライフラワーとなった花のみが往年の美しさを今に伝えている。
 そろそろ空が明るみだした頃、重い腰を上げてマルトの独房を訪れた。正直、あまり気が進まない。マルトと顔を合わせたくないのだ。たとえ向こうがとうの昔に俺を認識できなくなったとしても。
 マルトは俺の弟で、俺たちの分隊のリーダーでもあった。どんな困難な状況でも冷静さを失わず、必ず任務を遂行する。肝っ玉の小さな兄とは正反対のできるやつだ。俺たちが捕らえられたときも、最後の最後まで希望を失うことなく、ここを脱して本部へ連絡する方法を模索しつづけた。顔のない看守の目を盗んで、独房の壁にひそかに穴を穿ち、樹脂粘土を使って巧妙に偽装した。穴はマシタとイナダが率先して掘削し、生活排水を処理するためのパイプを見事探し当てた。人間が四つん這いで通れるくらいの大きさで、おそらく監獄の外へ通じているはずの排水路だ。
 脱獄決行の夜、クボが発芽しなければ。したとしても、あと数時間遅ければ、俺たちは脱獄を選んだはずである。それが成功したかはともかく、間違いなく挑戦はした。
 だが、俺たちは決行を一日遅らせることにし、それから順番に発芽がはじまって身動きが取れなくなった。
 脱獄用の穴はまだ顔のない看守たちに気づかれてはいない。その気になれば、俺はいつだってここから逃げだせる。なのにそうしないのは、同僚の世話をしなくちゃならないからだ。仲間を見捨ててはいけない。いや、そんな人道的な感情はただの建前で、本当は臆病なだけだ。あるいは俺の脳へ埋めこまれたまま未発芽の種が、俺の意識へ作用して反抗的する意欲を挫いているのかも。昔ドキュメンタリーで観たことがある。宿主の意識を操作し、ゾンビ化して操る寄生虫。そんなのが、俺の意識へ作用しているとしたら? まあ、もしそうだとして、俺にそれを認識する術はないのだが。
 頭の中であれこれ考え、弟への罪悪感を紛らわす。苦悩した表情のまま木質化し固定された弟の顔。亀裂の生じた虚ろな眼球。そんな目で俺を見るな。黒ぐろとした肥料の粒を移植ごてで掬い、露出した後頭葉の隙間へ押しこんでやる。脳漿なのか樹液なのか、透明な液体がじわっと滲む。緩効性肥料が静かに溶けだしてゆく。栄養を受けとると、どの鉢も心なしか嬉しそうな気がする。俺としても世話係冥利に尽きるというものだ。この感情も、ひょっとして脳内の種に操られた偽りの歓びなんだろうか?
 水をやって自分の監房へ戻ると、顔のない看守が戻ってきて施錠する。毎日その繰りかえしだ。俺は小姓から与えられる食餌でかろうじて命をつなぐ。小隊のメンバーのなかで、俺のみが発芽を免れたのはなぜなのか。考えようとするとこめかみに痛みが走る。
 月日が流れ、収穫期が訪れる。あごを撫でると鷲掴みにできるほどひげが伸びている。時間の感覚はだいぶ麻痺したが、それでもずいぶん経過したのはこのひげが動かぬ証拠だ。
 最後の水やりをする。四体の鉢は果樹に栄養をことごとく吸われ、干からびて胎児のミイラみたく縮んでいる。もう性別も年齢も区別がつかない。だが彼らの頭上の果樹はみごとに成長し、濃紫の果実をたわわに実らせている。日ごと色づく果実は、フードの小姓が品定めをし、熟成を見計らって摘み取られる。ひとつ、またひとつと収穫が行われる。今期のすべての収穫が済んだら彼らはお役御免だ。栄養を使い果たした鉢では収穫が見込めない。また新しい鉢を捕まえ、豊富な土壌で育てた方がうまく行く。
 ふと作戦決行の夜を想いだす。小隊のメンバー全員で宿舎パーティーをした。翌日から危険な任務がはじまるというのに、よくもまあ揃いもそろってはめをはずしたものだ。
 マルトは俺たちに飲みすぎないようくぎを刺した。あいつは酒がからきしだった。体質的に合わないらしい。ハイスクール卒業後のプロムで無理に呑ませ、救急車で搬送されたこともある。あのときは親父にしたたか殴られた。
 ひとくちくらい呑めよ。酔ったイナダが酒を勧めたが、マルトは苦笑いしてやんわりと拒んだ。気持ちだけ受け取っておく。そう言ってジンジャーエールを啜った。懐かしい思い出。だがずいぶんと遠く感じられる。弟に対してあったはずの愛情もだいぶ薄らぎ、ただ、楽しかったという追憶の残滓のみ。
 すべての収穫が終わると、俺は中庭へ出された。少し休んだら、同僚たちを伐採する作業に入る。全員焼却炉へくべる。これが済んだら俺はどうなる。俺もまた役目を終えて処分されるのか。それとも次に運ばれてくる苗の世話を任されるのか。顔のない看守たちの考えはまるでわからない。
 中庭の片隅へ放置されているのは、末成りの果実だ。市場価値がなく、うちやられた腐りかけの果実。ざくろを想わせる甘い香りを放ち、親指ほどの太さの不気味な虫が群がってきて汁を嘗めている。
 俺は蕩けた果実を柄杓で掬うと、ひとくち嘗めてみた。甘く、脳天へ突き抜けるようなアルコールの旨みが喉を灼く。酒だ。酒の味がする。
 俺はバケツへ汁を汲むと、かつてマルトだったミイラの委縮した体へその汁を濯いでやる。灌仏会に甘茶を濯ぐみたく、発酵が進み天然の醸造酒と化したその豊潤な液体を呑ませてやる。
 なあ、これなら下戸のおまえでも一杯やれるだろ?
 俺は独房の壁にもたれかかると、弟と無言で酒を汲み交わした。酔うのなんて久しぶりだ。アルコールの効能なのか、俺の脳の奥底に眠っていた人間らしい部分がようやく目覚めてくれたらしい。俺は弟の鉢から溶け残りの肥料の欠片をつまむと、酒と一緒に呑みくだした。(完)