ぶんかじ問1
第一章 自分の文のひびき 練習問題① 文はうきうきと
問1:一段落~一ページで、声に出して読むための語りの文を書いてみよう。その際、オノマトペ、頭韻、繰り返し表現、リズムの効果、造語や自作の名称、方言など、ひびきとして効果があるものは何でも好きに使っていい ──ただし脚韻や韻律は使用不可。
綿羊大兄ってのはひらたくいうと途方もなくエラいひつじの兄貴分で、なんたって名前からして大きな兄なんだからそんじょそこらのビッグブラザーなんか目じゃない。牧場の柵をかたっぱしから伐り倒して良さげなカウチをこさえると、自慢の毛で編んだメリノウールの織物を敷いて、どっかと腰をおろしてとうもろこしの煙管なんぞをスパスパふかしおつに澄ましている。
なんでそんなに偉そうなんだ、ひつじはひつじらしくするもんさね、とみちゆく農夫だの床屋だのが陰口を叩くけれど、綿羊大兄はてんでひるまない。にんげんどもの他愛もない悪口なんぞ、彼らひつじんるいにとってみれば些事も些事、まるでお話になんかならないのだ。
さてもさても愚かなるにんげんたちは、おれたちの毛だの乳だのを根こそぎ毟りとるくせして、自分たちの毛だの乳だのは一本一滴たりともおれたちには寄越しはしない。等価交換もへったくれもあるものか、あの欲の皮が突っ張った我利我利亡者どもめが!
下等なるにんげんどもよ、媚びよへつらえよ!
われらひつじを讃えよ!
われらひつじを讃えるべくして讃えよ!
綿羊大兄が痰と気炎と煙を吐くたんびに、若いひつじの舎弟たちはめえめえと拍手喝采、偶蹄をぱちんぱちんとうち鳴らしては、かれらの偉大なる兄貴分を上から下まで褒めそやした。実際のところにんげんとひつじんるい、家畜としてどちらがすぐれているかといえば、それはもうひつじんるいの圧勝というもので、だからこそ貧乏牧場の経営は彼らを中心にまわっているのだ。
夜空に浮かぶチーズ色をした望月もほら、ひつじんるいの栄華をうたっているではないか。あと三日もすれば、そのまんまるなお月様がかれらの頭上へ落ちてくるとしても、それまではこの世の春を謳歌して満喫してエンジョイして、ねえ、彼らがどんな境遇の生き物だったとしても、肉になるまで毎日をたのしく過ごせるのなら、それって素敵じゃありませんか?
PCデスクのサイズについて
新しくデスク環境を整えるにあたってまず必要なのはデスクであることは論を俟たないが、 実際に誂える段になると考慮する点(置く場所、サイズ、高さ、天板の材質、値段erc...)が多く、 途方に暮れがちではある。
今回、私が選んだのはサンワダイレクト シンプルワークデスク 幅100cm×奥行60cmで、 栄一1枚(という表現もなんだかしっくりこないので諭吉算の有難さを実感する)で買えるデスクとしては悪くはないものの、 やはり使ってみると不便が目立つのである。
長年デスク作業をしてきた私の考えるデスクサイズの所感についてメモを残しておく。
| 長さ(cm) | 所感 |
|---|---|
| 80 | かなり小さいが、ノートパソコンならこれで十分ではある。ワンルームならこのくらいがいい。吾唯知足ってやつだ |
| 100 | 今使っている。27型4kモニタ一枚で運用中。モニタアームを設置するとアームの長さによってはモニタが正面に来ないのが地味にストレスポイント |
| 120 | このくらいあると横に書類や飲食物を置いても邪魔にならない。次買うならこのサイズか? |
| 140 | ゲーム用PCデスクとして利用中。24型デュアルモニタに小型ブックシェルフスピーカーを置ける。快適ではあるが場所を食いすぎる |
| 160 | このサイズになるとパソコン作業+別の趣味用として使うのが前提ではないか? |
というのが今のところの雑感だ。 まだ奥行と高さに関する考察が残っているが、こちらはまだ結論が出ていないので今回はこれで。
掌編「コタツ」

電子の金屎をかき集めるシステムインテグレーターとしての生活へ嫌気がさしたのか、君は最果てでしばらく体を休める決意を固めた。今さらのキャリアブレイクなぞだれが気に病むものか。
十数年にわたる放浪の旅を経て最果てへ到達した君は、茫漠とした無人の空間へ、ぽつんとコタツが設えてあるのを発見した。これが俗にいう最果てのコタツだと君は直感的に理解する。
地磁気が乱れ、座標も時刻もくるいつつある不毛の土地においてもなお、コタツは歴としたコタツとしてそこにある。世界のどん詰まりに似つかわしくない小綺麗な琉球畳が敷き詰められ、おおむかしのナショナル製とおぼしき頑丈な木組の櫓に、ふかふかした千鳥格子の布団が被せられ、頑丈な樫材の天板が設えてある。
君はおもむろに布団をめくる。ハロゲンヒーターに温められた空気が漏れだし頬を撫でる。ダニの死骸と、埃の焦げる懐かしい郷里のにおいがする。電源はずっと入れっぱなしだったのだろうか。世界の果てにおいてもなお電力は無駄遣いされるのか。
君は若干の後ろめたさを抱きながら、糞掃衣の裾を捌いて畳へ腰をおろし、コタツへ脚を入れる。遠赤外線のぬくもりが下半身を包み、ある種の湯煎状態の血液がめぐると、改めてその身の疲労が意識される。君は自分が疲労困憊なのを発見した。産業医との面談で、初めて死ぬ寸前の過重労働を自覚したあの日みたいに。
全身が温まってくると長旅で蒸れた靴下がむしょうに痒く、また不潔なものとおもわれて脱ぎすてる。なんの変哲もない化繊の靴下。ここへ来るまでに幾度となく穴があき、交換した。その最初の一枚は、旅立ちの前に決別した恋人がくれたもので、懐かしいその女の顔を思い浮かべようとしたが、記憶はだいぶん薄れつつある。
ふとたわむれに脱いだ靴下を手にとってにおいを嗅ぐ。イソ吉草酸をふんだんに含んだそれは芬々たる悪臭を発し、もはや尋常の洗濯で清められるとは思われない。この悪臭の蓄積こそが自分の旅の総決算なのだと考えると、やや興ざめした気持ちが萌し、君は靴下をくるくる丸めて最果ての崖へと向かって投げた。
最果てとは世界の果ての意味だから、その向こうはこの世界に属さない、まったくの虚無、完全な真空だ。いや、観測さえ届かないのだから、それが完全な無かさえこちら側からは判別がつかない。
途轍もなく臭い靴下は、ゆるやかな放物線を描いて世界の向こうへと消失した。
もし宇宙がこの宇宙以外にもあるなら、と君は想像する。あの向こうは別の宇宙へ接続されているのかもしれない。履き潰した靴下という従属から解き放たれた靴下は、向こうの宇宙ではなにか別の、キラキラした素敵なものとして存在するのでは。未知の物理法則が支配する、まったく異質な状態へ遷移した君の靴下は、ひょっとすると乾いた大地を潤す雨になって降り注ぐのかもしれない。
とすると、君が今から飲もうとしているボトルの水だって、別の宇宙の誰かの靴下のダシがしみているかもしれない。そんな嫌な方面の想像力も刺激され、君はボトルを遠ざけると、ウイスキーの小びんを取り出して飲んだ。むろん、これも誰かの小便だった可能性はあるけれど、まあ、酔ってしまえば多少のことは気にならなくなるものだ。
それにいま、君はコタツで脚をあぶっている。コタツで酒を飲むと、たいていの人間はすぐに眠ってしまうものだ。ましてや長旅のあとならなおさら。あとはただ、最果てではやっている風邪を引かないのを祈るのみだ。
20241103鶴見川タワリシチ
三連休を無為にすごした。その後悔と慚愧は決して癒えんのだが、それはさておきタワリシチャーたるもの外で飯を食うのが一分である。天気はあきれるほどの事な日本晴れ。こんなすがすがしい晴天は南国と化した日本であと何日拝めるかどうか。
駅近くの寿司屋で寿司を買う。手ごろなパック寿司はあらかた買い占められ、単品が心もとなくあるのみだ。仕方なくねぎとろ巻としめさばを買い、その足で揚げ物屋へ行き、めんたいロール(明太子を挟んだ鶏肉の揚げ物)とカキフライを買う。これで酒肴はととのったのだ。仮に不自由分とて、そう強く念じこむことで目の前に十全の馳走が広がる道理である。
河川敷はひとむかしまえに比べると森閑としておる。コロナ禍で頓に流行したテント持ち込みの陽キャどもひしめくキャンプ勢はなりを潜め、やがて火は消え、暗闇だけが残る。
寿司と揚げ物を叢に潜んで――というのも河川敷で火器を使うと管理事務所の下請けらしきおっさんににらまれるので――むさぼり食っていたら近所のピュアなジャリボーイが覗きこんだ。…ほう、珍しいこともあるものじゃ。亡者の穴蔵に、まともな奴が落ちてくるとは。それとも貴公、そういうふりがうまいだけかね?
トランギアの薬缶でお湯をわかし、芋焼酎もぐらのお湯割りを呑んだ。芋焼酎とはお湯割りでこそ花開く酒。ある意味日本酒以上に冬の酒なのだ。
少年よ、酒に呑まれるなよ。強く生きるのだ。名も無く、薪にもなれなんだ、呪われた不死。けれど、だからこそ灰は残り火を求めるのさね。
20240930鶴見川タワリシチ
かれこれ数年近く慢性的な意欲の低下に苦しめられており、いわゆる男性更年期の可能性を疑っているのだが、それとはなんの関係もなく鶴見川で昼メシを食べることにした。
鶴見川タワリシチとは「鶴見川の河川敷で喫食する」くらいの意味である。同志とは言っているが実行しているのは私一人である。
駅前の精肉店で唐揚げ弁当を買い、河川敷近くのコンビニで黒ラベルの500ミリ缶を買う。ビールはやる直前に買わないとすぐ微温くなる。微温いビールはそれはそれで嫌いではないが、ラガーは冷えている方が旨い気がしている。

弁当とビールの組み合わせは腹に溜まるから、そんなに酒を呑まないで済むのは利点だ。焼き場で火葬を待つあいだ、別室でビールと仕出し弁当を食う段取りはよく考えると理に適っている。あの場で旨い酒や肴が出てきようものなら、遺骨と対面する頃にはべろんべろんに酔ってしまい骨上げもままなるまい。

都市の下流の河川敷特有のどぶ臭いにおいがかすかに薫るなか、弁当を食い、小雨に打たれる。月曜の午前の河川敷は人が疎らで、もくねんと弁当を食ってる物好きは私くらいのものだ。

川はだいたい清流が好きだけど、どぶ川にもまたどぶ川の良さがある。
最近の短歌

あれ野往く水辺にごりて毒蛾群れ鱗翅学者の夜は賑やか
我にもし蚯蚓集めの甲斐あらば娘の指へそれを結わえん
気のぬけたサイダーの壜もて余しさぐる左手浴衣の君の
アベックが睦みささやく公園の繫みの中にそを聴きにゆく
鼻先で揺れる寝ぐせに君香る手櫛とおして朝が香る
トンカツがやたらと旨い休みの日われとわが身の疲労を知る
銭湯で春場所眺め待ち飽きて手ぬぐい透かして打つLINE
靴ひもで結わえられたるわが身体今日もまた仕事が始まる
骨壺の底へかさねし椎骨の粗熱こもるる祖母の生きざま
徳用のクリーム重ねしくるぶしの割れた肌理が田んぼに似ており
かりんとうみたいなうんこした犬がいてそんな世界が続いてく
父のない寂しさなぞ知りそめて濃いめの泡盛よるの献杯
徳用の湿布貼るべく今日もまた悪戦苦闘の独り身か
おにぎりに梅干し2個は多すぎたラップに包んだ種を見つめ
銭湯の壊れたロッカー戸がなくてなんだか枯れ木のうろに似る
職場には吸える酸素がない深呼吸して息とめ潜ろう
平日のラブホ街を散歩するぼろスニーカーの足音ひとつ
コーヒーは僕を動かす熱き泥胃の腑めぐれば朝が始まる
ケンタッキーを腑分けしろリブ齧りし部活帰りの蘭学者
生活にひたひたと呑まれるかかっぱ巻き齧れば胡瓜にがし
2024前期 プレイしたゲーム寸評
- Cobalt Core
FTL: Faster Than LightにSlay the Spire的な要素を追加した宇宙船ローグライク。StSライクなゲームとしては筋は悪くないと思ったものの、一度クリアしたところで中断。 - 地球防衛軍5
プレステ4でプレイ済なのだが、6がなかなか出ないのでつい購入してしまった。最初からやり直すとなるとアーマー値を集めるのが面倒で断念。6ももうじきsteamで出るものの、プレイするかは微妙。 - Ender Magnolia: Bloom in the Mist
前作がよかったのでアーリーアクセスで購入。退廃的な世界観は上質で、セットした仲間を呼びだして攻撃するシステムもいいのだが、いかんせん体験版並みのボリュームなので評価対象外。完成を待ちたい。 - 不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録
14年ぶりとなるシリーズ完全新作なので期待半分不安半分だったが、箱を開けてみれば良作と呼べる出来でほっとした。全体に初心者向けの作りなのでシレンジャーとしては物足りない部分もあったが、これは今後のアップデートやDLCで解消されそう。今後も新作を作りつづけてほしいものだ。 - Subnautica
海洋探索クラフトゲー。数時間遊んだものの、目的が分かりづらく、探索が面倒でモチベーションが続かず断念。おなじ海洋探索ゲーであるデイヴザダイバーの作りの上手さを再認識した。 - ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE
ようやく発売したエルデンリングのDLC。本編も二郎系ラーメンみたいな物量の暴力だったが、DLCもそれに負けじと凄まじい量の替え玉を追加してくる。本編ではなかったバグが生じたり、ゲームバランスの詰めがあまいのは気になるが、今後のアップデートでの解消を期待したい。
